四阿の静謐 -castitatis lilium-

台湾の台北在住。台湾企業に勤める会社員。日々の記録。

自分の価値は自分が決める。

昨日はパソコンのオンラインシステムに不調が出て客先にデータが送れず、今悶々と担当者待ち。午前中に電話したのにまだ来てくれない!きー!この担当者は常に何かしらで忙しく、わたしのようにあまり知り合いでない外国人には非常に冷たいため、できれば関わり合いたくないのだが、システム関係は全てその人が請け負っているので頼まざるを得ない。あー早く終わらせてすっきりしたいというか、このまま放置しておくと忘れてしまいそうで嫌なのに。結局午後にもう一度電話して、本人はまた不在で伝言を頼んだところ、夕方になってやっと来てくれた。ポチポチっと操作して簡単に直るシステム。しえしえ、と言っても何も返ってこない。はいはいお忙しい中こんな小者のためにお手を煩わせてすみませんでしたあー。

 

ミス・パイロットが面白い。一昨日まででアメリカ編が終わって、訓練生が帰国したところまで。昨日は千里が辞職を撤回して新しい道へ踏み出すまでの話だった。千里は座学も技術も優秀で、誰もが彼女が脱落するなんて考えてもいなかった。しかし操縦中に不測の事態に遭遇したとき、彼女は完全に茫然自失状態に陥ってしまい、教官たちの声も耳に入らないほど固まってしまった。それが原因で脱落となったものの、パイロットになれないなら意味が無いと思いつめ、他の道を必死に進める周りの好意を頑なに拒んだ。それでも、最後の最後で晴たち仲間や教官の想いを受け止め、ディスパッチャーを目指す道を選択した。「飛行機はパイロットの力だけで飛んでるんじゃないだろ?」という国木田教官の言葉と、晴たちの「わたしたちずっと仲間でしょ?死ぬまでバディでしょ?(ちょっとうろ覚え)」という言葉が、千里の凍っていた心を溶かしたように思えた。

千里のように自他ともに認める優秀な人は、一回挫折したり失敗したりすると、それで失ったものに執拗なまでに執着する。何故よりにもよって『デキる人間』であるはずの自分が大事なチャンスを失わなければならないのか?そのことが一人ではどうしても受け入れられなくて、でもそれを必死に周りに悟られまいとする。「面倒くさくてごめんなさい」と千里が言うシーンが何回もあるが、この言葉が彼女の心情を一番端的に表していると思う。自分でもわかっているのだ、周りの優しさが、好意が本当にありがたいもので、素直に受け取るべきだということを。でも好意は時として同情に感じられることがあり、同情を寄せられる立場に甘んじた自分がどうしても受け入れられない。悔しくて、自分が情けなくて、こんなの自分じゃないとしか思えなくて、同時に好意を受け取れない自分も大人じゃないなと申し訳なく思って。その板挟みで「面倒くさくてごめんなさい」が出てくるのだと思う。


自称『優秀』な人間にとって、晴のように本当の意味で素直な人間ほど脅威なものはない。彼らは素のまま、ありのままで、周りからの信頼も手助けも、人間としての尊敬も愛情もなんの苦もなく手に入れていく。晴の悩みや苦しみは、そういう人間から見れば羨ましいほどピュアで、誰かのためすぎて、自分には決して悩めないことだと痛感させられる。

だからかな、わたしはずっと千里の心情ばかり気にしていた。弱みを見せられないことが弱みだと最後に国木田教官が言っていたけど、わたしには千里の気持ちが少しわかるような気がする。もちろんわたしは千里のように優秀ではないけれど、周りからも評価されて、自分でも他人よりできると思っている状況では、弱みをさらけ出すことが自分の致命傷になる氣がしてどうしてもできないのだと思う。千里が脱落した後に、「もしパニックのことを言ったら、パイロット失格の烙印を押される気がして怖かった」というようなことを口にしていて、ああ……と心が痛んだ。それ以前にも、バディを変えてくれと国木田教官に直訴した時に逆に「お前なら手塚をどうにかしてくれると思ってバディを組ませたんだけど、俺の見込み違いか」と言われ、俄然張り切って晴を特訓し、「教官を失望させることはしませんから」と言い切った千里を見たときにも感じたこと。

千里は、自分の評価が他人基準なのだ。

人にどう評価されるかで、自分の価値が決まると思っているのだ。

だからパイロット失格と言われるのが怖かった。他人からそう言われてしまえば、それが自分にとっての絶対的事実になってしまうから。また、期待されれば絶対にそれに応えなければいけないと強く思う。他人が評価してくれているのだから、期待されるレベルができないと他人に受け入れてもらえる自分ではなくなってしまうから。それに気づいた時、千里の言動や行動がまるで自分のことのように思えて、胸がつかえたように苦しかった。もっと、自分を信じていいのにって。千里だってそのままで十分受け入れてもらえる人間なのにって。……そっくりそのまま自分に聞かせてやりたい言葉。


でも千里がわたしと違うのは、自分を心から心配てくれている仲間たち、教官、父親の気持ちを最後はきちんと受け止めることができたこと。今の自分を真正面から受け入れ、周りの好意を素直に受け止め、これからできうる最大限の新しい未来に向かって歩き出せたこと。千里は人間としての本当の強さがある人なんだなあと思った。だからこそみんな応援したくなるんだよね。