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四阿の静謐 -castitatis lilium-

台湾の台北在住。台湾企業に勤める会社員。日々の記録。

鬱々しい。

容赦なくうず高く積まれてゆくファイルの山。3月末はもう請求書が切れないことは誰にも理解してもらえない。何たって会計年度の区切り方が違いますしね。自分の手元の仕事だけちゃっちゃとはけさせればおkって話ですよねわかります。人のことを思いやる、慮るとかいう文化ないですしねわかります。わかりますって、ば。

仕事はきらいじゃない。自分のペースを乱されるのが嫌なのだ。事情があってわざと処理を滞らせているのに、それを無視する勢いでどっさどっさ次から次へと仕事を持ち込まれるのが腹立たしいのだ。眼前の状況に対してなんにも思わないその鈍感さに苛立つのだ。でもわたしにはどうすることもできない。そんな相手に対して、わたしはどこまでも無力だ。そもそも、相手に気遣いを求めること自体が間違っている。そんな義務は相手にはまるで無いのに、さも相手の至らなさのせいだとばかりに心の中で罵詈雑言を吐きまくるわたしは、アホや、アホやとわかってるのに瞬間沸騰ばりの早さやから止められへん。周りが理解できないのをいいことに、ぼそぼそっと日本語で呪いの言葉をつぶやく。黒インキが心の水面にブワッとにじみ広がるのが分かる。時には目尻に涙さえにじむ。心は相手を殺したいほど憎んでいるのに、そのどす黒く重たい感情を身体が哀れんでいるかのように。こんなんだから、35になってもわたしは自分を肯定できないし、この世で一番わたしを嫌っているのは自分だと思う。だから、誰からの愛情も信じられないのだと思う。

 

村山由佳の『花酔ひ』のハードカバーをたまたま古本屋で見かけて、試しに買って読んでみた。欲望と欲望が呼応する物語。自分が望むものとの邂逅を果たして、どうしようもなく嵌って堕ちていく4人の男女の物語。純粋なむき出しの欲望がぐいぐい迫ってくるような筆致。でも結末があまりにもあっけなくて、それまでのねっとりと濃密な昏さが嘘のように掻き消えて、ポイっと置いて行かれたような気がした。やや消化不良。途中までは身体が少し悶える程の引き込み様だったのに。

性的嗜好と身体の相性というのはどうしようもなく存在するもので、それは相手を人間として好きかどうかとは基本的に関係がないと思う。ただ、自分の秘めた欲望を満たしてくれる存在に溺れる、そのなんと甘美な歓び。抜け出せないと思ってしまうのもわかる。理性やら常識やら、ありとあらゆる社会性とは対極にある営みで、自分を完全に一体の動物へ還元してしまうほどの解放。もはや麻薬に近い作用さえあるような気がする。だからこそ長く続ければ病んでしまうのだ。快楽だけの生活は、あまりにも気持ちよすぎて満足するがあまりに、人の心身を蝕む。ここが、人のヒトたる所以だろう。